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STEAM教育とは?実践される背景や国内での取り組み事例について紹介

STEAM教育とは?実践される背景や国内での取り組み事例について紹介

STEAM教育の前進は、2000年代後半にアメリカで始まった「STEM教育」です。

 

STEM教育は「科学、技術、工学、数学」を横断的に学習することで数理的思考力を育むという教育概念です。学問領域から見ても、理系人材の育成を目指すものであることが分かるでしょう。

 

普及に向けた大きな転機となったのは、2009年にオバマ元大統領が就任したことです。オバマ元大統領はSTEM教育支援を選挙公約に掲げており、「問題解決、批判的思考、企業家精神、創造性」を「21世紀型スキル」と捉え、その重要性を理解していました。

 

特に、2011年の一般教書演説においてSTEM教育を優先課題に位置付けると発表したことによって、STEM教育は一躍有名になりました。

 

当時のアメリカで問題になっていたのが、たとえば、2012年に実施されたOECD生徒の学習到達度調査(PISA)のように、数学・科学リテラシーの低さが浮き彫りになったことです。

 

そこで、2013年に「STEM教育5カ年計画」が発表され、2020年までを目安として、初等・中等教育におけるSTEM分野の教師の養成とSTEM分野の大学卒業生の増加という目標が掲げられました。

 

2015年には「STEM教育法」が施行されたことにより、STEM教育の定義にコンピュータサイエンスを含めたり、問題を社会と結び付けたりして、当初の理系人材の育成から人文系への広がりが出てきました。

 

そして、2017年に「STEM教育法」は「STEAM教育法」になり、STEM教育にArtを加えたSTEAM教育として推進することで、よりクリエイティブな人材の育成を目指すことになったのです。

STEAM教育が実践される背景

日本においては、「自己受容力」の改善と次世代のクリエイティブ創出について、高い危機感を持っているという背景があります。

 

たとえば、日本財団が令和元年11月30日に発表した「18歳意識調査 – 国や社会に対する意識」の結果、日本はインド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツと比べていずれの項目においても最下位となっているのです。

 

具体的には、「あなた自身について、お答えください」という質問のうち、「自分を大人だと思う」は29.1%、「自分は責任ある社会の一員だと思う」は44.8%であり、他国の3分の1から半数近くにとどまっています。

 

また、「将来の夢を持っている」は60.1%、「国に解決したい社会課題がある」は46.4%と、こちらの回答も他国に比べ30%近く低い数字でした。

 

さらに、「自分で国や社会を変えられると思う」人は18.3%で5人に1人にも満たず、他の8ヵ国の中で最も低い韓国の39.6%に対し半数以下となっています。

 

他にも、「自分の国の将来についてどう思っていますか?」という質問に対しては、「良くなる」と答えた日本の若者は9.6%で、トップの中国(96.2%)のおよそ10分の1です。

 

つまり、この調査を通じて、日本は途上国、先進国のいずれと比べても数字の低さが際立つ結果となっており、教育に関する課題が明らかになりました。

 

なお、経済産業省が実施した「Society5.0時代のオープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性」という調査の中でも、日本のクリエイティブの創出への危機的状況が浮き彫りになりました。

 

たとえば、競争力の維持に関する質問のうち、自社の経営モデルを抜本的に変革する準備はできているか、という項目について、「準備できている」と回答した日本のCEOは47%と、こちらも他国に比べ最下位となっています。

 

以上の調査結果から、日本は総じて「自信がない」という意識状況がうかがえます。

 

そこで、クールジャパンの次なる日本の魅力戦略として、「自信がない」を「自己受容力」に変えるために、クリエイティブの育成を目指すSTEAM教育への需要が大きく高まっているのです。

 

出典:日本財団「18歳意識調査」第20回 テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査) | 日本財団
参照:https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2019/20191130-38555.html

 

出典:Society 5.0時代のオープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性 | 経済産業省
参照:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/010_02_00.pdf

STEAM教育の国内での取り組み事例

日本におけるSTEAM教育への取り組みの主な事例として、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」、「サイエンス甲子園(科学の甲子園)」、「プログラミング教育」の3つをご紹介します。

 

ひとつめの、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」は、2002年から始まった取り組みで、先進的な理数系教育を行う高校を文部科学省が指定し支援するというもので、毎年20校程度が選ばれています。

 

ふたつめの「サイエンス甲子園(科学の甲子園)」は、2012年に科学技術振興機構が始めた取り組みです。

 

こちらは、「広げよう科学の輪 活かそう科学の英知」を目標に、高校生が理科・数学・情報における複数分野の競技を行う大会で、各都道府県から1つの学校の代表チームが構成され、県大会と全国大会が開催されています。

 

内容については、たとえば、地球の重さを求める問題を解いたり、決められた部品や材料でつくったモーター車によるレースを行ったりといったものです。

 

みっつめの「プログラミング教育」は、2020年から小学校で必修となりました。小学校のうちからプログラミングを学ぶことにより「論理的思考力」を身につけるとともに、さまざまなインターネットツールを使いこなすための基礎的能力を養います。

 

出典:初等中等教育における情報教育等の推進|内閣官房内閣広報室
参照:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/dai6/siryou4.pdf

STEAM教育の教材について

「STEAMライブラリー」、「教育版レゴ® マインドストーム® EV3 for home」、「タミヤ楽しい工作シリーズ リモコンロボット制作セット」の3つをご紹介します。

 

ひとつめの「STEAMライブラリー」は2021年3月に、経済産業省が小学校~高校の指導者向け開始したオンラインサービスです。

 

「STEAMライブラリー」の製作には企業・研究機関も参画しており、コンテンツや指導案などが集約されたプラットフォームとなっています。

 

指導者は会員登録すれば授業で使用する動画やスライド、指導案、生徒向けワークシートなどを無料で使えるコンテンツを選択できます。

 

コンテンツは、民間事業者や高校、大学、研究機関などが連携して開発し、オンライン上に公開されることから、子どもたちは好きなときにいつでも視聴可能です。

 

「教育版レゴ® マインドストーム® EV3 for home」は、レゴとプログラミングを組み合わせたもので、従来のブロックによる創造力だけでなく、論理的思考力や問題解決能力も高めるものになっています。

 

「タミヤ楽しい工作シリーズ リモコンロボット制作セット」は、パーツの組み合わせでロボットをつくり操作するタイプの教材で、レゴとの違いは動作がプログラミングではなくリモコンによるものであることです。

 

このように、子どもたちがワクワク感を持ちながら学べる教材が増えてきています。

STEAM教育の課題は?

STEAM教育は今までになかった教育概念であるため、日本は他国と比べて取り組みが遅れています。

 

ここでは、日本が抱える課題について見ていきましょう。

教員の人数不足

問題になっているのは、「教育者側の人材不足」です。

 

STEAM教育は新しい教育概念のため、指導できる人材が少なく、物理的に教員側の人数が足りていません。

 

そのため、政府関係者からは、理系分野の専門知識を持った人材の不足を補うため、民間企業との連携が強く求められています。

 

さらに、プログラミング授業では、教員の知識が子どもより劣っていることもしばしば見受けられ、すでにプログラミングに親しんでいる子どもにとっては授業がつまらなく感じることもあるようです。

地域や家庭の格差

学習環境の整備状況について、地域や家庭で生じている格差についてもおさえておきましょう。

 

STEAM教育を学ぶには、タブレット端末やWi-Fiなどのネット環境のように、必要な機材はまだまだ高額のものが多いため、各家庭の資産背景によって学習環境に差が生じやすくなっています。

 

また、教育に力を入れている自治体とそうではない自治体、私立と公立、プログラミング教室の有無など、地域による格差もあります。

 

したがって、子どもたちが平等にSTEAM教育を受けられる環境を整えることが求められています。

電子環境の整備

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